シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「あ、あの……私は、慧悟さんが好きです! 慧悟さんだって――」

 言いかけた私の言葉を遮るように、奥様は大きな溜息を一つこぼした。

「知っているでしょう、慧悟には許嫁(いいなずけ)がいるの」

「え……?」

 頭が真っ白になる。
 脳裏に、あの日約束を交わした慧悟さんの顔が浮かんだ。

「でも、私約束したんです! 言われたんです、慧悟さんに『僕たちのウェディングケーキを作って』って……」

「なら、その『僕たち』の中に、あなたは入っていないわ」

「あ……」

 その可能性に、その時初めて気が付いた。

「幾美家は然るべき家柄の人と婚姻を結ぶ。それか財閥のしきたりなの。そうやって、幾美家は名誉と誇りを維持してきたの」

 初めて知った。
 私は、幾美家には相応しくない人間なのだ、と。
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