年上幼馴染の一途な執着愛
「……昨日、あの後彼氏でもできた?」

「え!?」

「お、当たり?」

「どうして……」

「いやぁ、そうじゃなきゃ昨日の今日でそんな深刻な顔で断りに来ないでしょ。秋野さん、真面目だから何日も考え込むタイプだと思うし」

「……よくご存知で……」

「結構秋野さんのこと、見てたからね。それに、秋野さんの気持ちが俺に向いてないことくらいわかってたから、昨日のはほぼ負け確定の賭けみたいなものだったし。当たればラッキーみたいな? だから、そんなに気にしなくていいよ。まぁ、昨日の今日で振られるとは思ってなかったけど」


面白そうに笑う浅井さんの本心がわからない。
まさかこんなあっさりとわかってくれるとは。
なんだかあれほど悩んで身構えていた自分が滑稽に見えて、拍子抜けしてしまう。


「そもそもあんなにキス拒絶されたの初めてだったし、あの時点で無理だなと思ったよ」

「あ、えっと……なんかすみません」

「いやいや、謝るのは俺の方だよね。好きでもない男から迫られて怖かったでしょ。ごめんね。もう絶対しないって約束するから」

「はぁ」

「だから、また仕事仲間としてよろしくしてもいい?」

「……はい」

「ありがとう」


浅井さんから差し出された手を軽く握って握手をする。

多分、私が必要以上に気にしないように明るく振る舞ってくれてるのだと思う。
そんな気遣いが申し訳ないと思うけれど、ここで私が謝るのは違う。
素直にその気持ちを受け取るのが正解だろう。
浅井さんは


「これくらいかっこつけさせてよ」


と言ってコーヒー代を払ってくれて、丁重にお礼を告げてそのまま一緒に会社まで行く。
途中で真山さんにも遭遇し、三人でわいわい言いながら出勤した。
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