先輩!
「だめ!先輩!」

両手で先輩の口を慌てて塞ぐ。と、そこに唇が、しっかりと押し当てられた。

「油断も隙も無い!」

びっくりして手を離すと、先輩が可笑しそうに笑って。


「好きな子がこんな近くにいるんだぞ?したいだろ?」

好きな子!

もう、キャパオーバーです!


「先輩、この案件一旦持ち帰らせてください」

ムスッと、分かりやすいくらい先輩が不機嫌な顔になる。ごめんなさい、でももう、いろいろ限界超えちゃって。

「期限は?」

「無期限でお願いします」

「却下」

「でも…」

「なあ」


優しく諭すような声。私の心臓はさっきからずっとパニックだ。先輩のせいで誤作動しそう。


「あんま待てないから」


今度は先輩の大きな手のひらが私の口元を覆った。

それから、スローモーションで、先輩の顔が近づいてきて。


少し首をかしげ、ぎりぎりまで近づいたとき。


そっと目を閉じた先輩は、フワリと自分の手の甲に、キスをした。
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