先輩!
「一人暮らしが怖くて不安なら実家に戻ってらっしゃい」

「ここからだと会社まで2時間かかるし、」

「それなら早く部屋を探したら?久保さんは毎週欠かさず連絡してくださるから、ありがたいんだけど、お母さん申し訳なくて」

「え?連絡?」

「芽衣知らないの?」


知らないも何も。全くの初耳で何のことやら。

「週に一回は芽衣の様子を電話で報告してくださってるの。今週も問題ありませんでした、安心してくださいって。マンションの様子を見に行ったり警察と話をしたんですが、あれから不審な男の姿はないみたいだって」

「そうだったの?」


先輩そんなこと一言も教えてくれてない。

今すぐ先輩に会いたい。会って感謝を伝えたい。迷惑ばかりかけていることを謝罪して、大好きだと伝えたい。


「芽衣がいい人とお付き合いできてよかった」と母が笑うから。

先輩の優しさとお母さんの優しさで胸が熱くなり、こみあげてくるものを、ぐっと懸命に抑え込む。


いつだったか、妹から聞いたことがある。


玲央と別れたことを泣きながら電話で伝えたら、ずっと慰め励ましてくれた母が、電話を切ってからキッチンで一人ずっと泣いていたと。
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