先輩!
目覚めに、大きめのマグカップ一杯のブラックコーヒーを飲んでもまだ眠そうな先輩が、スーツという名の戦闘服に着替える。
『翔くん』が『先輩』に変わるその瞬間が、何度見てもどきっとする。
ピシッとノリの効いたYシャツに袖を通し、折り目のついたスラックス。引き締まったウエストの位置が高くて、スタイルも良くてかっこよくて。
仕事ができて、信頼できる。尊敬する、わたしの上司。
クローゼットの前でネクタイを選んでいた先輩が、両手にブルー系を1本ずつ持って振り向いた。
「ネクタイどっちがいい?」
「どっちもいいです。かっこいい」
「ん、どっちでもいいや。締めてよ」
「かっこいいって言われたー」と笑顔で近づいてきた先輩に、何でもない日にプレゼントした方を選んで結ぶ。
腰を折って結びやすい位置まで低くなってくれて、ワックスでセットされた髪の毛から、ふわりといい香りがする。
それから、いつもの香水の付けたての香り。
最初は手こずったネクタイも、今では上手に結べるようになった。
「サンキュ。ちょっと充電」
先輩に抱きしめられ、「わたしも充電」と男らしい身体に腕を回した。