先輩!
1時間ほど滞在した野口さんが「彼女の飲み会終わったみたいだから俺も帰るわ」と帰ってしまった。

「お祝いなんでここは俺たちが」と久保先輩が申し出たのに拒み、多すぎる現金を置いて。


「彼女待ちの時間つぶしか俺ら」

「そうだったんですかね」

はあ。なんか疲れたなあ。なんか、ショックだなあ。これからは誰に癒しを求めればいいのだろうか。

「お釣りどうします?もう1軒行きましょ!先輩付き合ってくださいやけ酒の気分です。先輩が飲んでるその日本酒ください」

「やめとけ。もうこれ以上飲むなよ。そこまで酒強くないんだから」

「大丈夫です。もし酔っぱらっても先輩がいるから」


はあ、と今度は先輩が大きなため息を吐いた。

お前なあ。とぼやいた先輩が、私の手からアルコールが残るグラスを奪った。


「これから大事な話するから。忘れられたら困るから飲むな」

「えーなんですか。これから仕事の話ですか?今日はもう無理です。そんな気分になれません」

「違うわ」


隣に座っている先輩が、椅子に座ったまま身体ごとこっちを向いた。
< 9 / 371 >

この作品をシェア

pagetop