先輩!
さっきまで笑っていた先輩の、まっすぐわたしを捕らえた目線に、思わずドキっとする。

顔つきが、変わっていたから。

仕事で見る真剣な表情とも少し違う、今まで見たことない顔つきだった。


「俺と付き合わないか?」

「(え、え、)」

「なあ、聞いてる?固まるなよ」

「(いえ、あの)」

「なんの冗談ですかとか言うなよ。冗談じゃないから」


ぶわっ、一瞬で背中に汗をかいた。

顔から火が出るって表現があながち間違いじゃないと認識できるくらい顔が熱くて、先輩から目を逸らさずにいられなかった。


先輩、本気だ。


「どうしてですか?」

「好きだから。それ以外理由ある?」

「好き、ですか?」

「ああ」


先輩は間違いなく若手の最注目株で。商品開発部時代には社長賞を獲ったときいた。

仕事ができるから上司からの信頼も厚い。面倒見もいいから後輩からも慕われている。もちろんわたしも。

そんな人が、私を好き?
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