人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「初めての方ですよね。今日はどうされましたか?」
表情は見えないけれど、彼女の声は今日も明るい。
(間違いない……)
カーティスはごくりと喉を鳴らした。
「俺のことを覚えていないだろうか……。ルシア・キリシス嬢」
彼女は鈍色の瞳でカーティスの全身を見回した。
今日は催事の合間に無理矢理もぎ取った休暇でもある。いや、両親と兄から背中を押されたというよりは叩かれ『催事はこちらにまかせておけ』と言いながら追い出されたわけである。
「え、と……。なぜ、私の名前を?」
そのためカーティスは、式典用の騎士服を着ていないし、まして濃紺の騎士服姿でもない。シャツにトラウザーズ、上にジャケットといたって普通の格好である。
知る者が見ればカーティスだとわかるだろうが、カーティスをよく知らない者が見たらカーティスであると認識できないかもしれない。だから、人にもみくちゃにされずにここまで足を運べたのだ。
彼女とは数日前に顔を合わせているはずなのに、カーティスであると認識されなかった。服装のせいかと思ったが、そうでもない。彼女はじっくりとカーティスの顔を見ている。となれば、ルーファが言っていたことが間違いないのだろうと確信する。
カーティスの瞳の色は珍しい。一度見れば印象づけるものだと思っているし、数日前にも会ったばかりである。
「やはり、俺のことを覚えていないのか? 四年前……騎士団の昇格試験のとき……」
そこまで言うと、彼女の身体が大きく震えた。もう一度、カーティスを上から下までじっくりと視線を走らせ、下腹部で止まる。
表情は見えないけれど、彼女の声は今日も明るい。
(間違いない……)
カーティスはごくりと喉を鳴らした。
「俺のことを覚えていないだろうか……。ルシア・キリシス嬢」
彼女は鈍色の瞳でカーティスの全身を見回した。
今日は催事の合間に無理矢理もぎ取った休暇でもある。いや、両親と兄から背中を押されたというよりは叩かれ『催事はこちらにまかせておけ』と言いながら追い出されたわけである。
「え、と……。なぜ、私の名前を?」
そのためカーティスは、式典用の騎士服を着ていないし、まして濃紺の騎士服姿でもない。シャツにトラウザーズ、上にジャケットといたって普通の格好である。
知る者が見ればカーティスだとわかるだろうが、カーティスをよく知らない者が見たらカーティスであると認識できないかもしれない。だから、人にもみくちゃにされずにここまで足を運べたのだ。
彼女とは数日前に顔を合わせているはずなのに、カーティスであると認識されなかった。服装のせいかと思ったが、そうでもない。彼女はじっくりとカーティスの顔を見ている。となれば、ルーファが言っていたことが間違いないのだろうと確信する。
カーティスの瞳の色は珍しい。一度見れば印象づけるものだと思っているし、数日前にも会ったばかりである。
「やはり、俺のことを覚えていないのか? 四年前……騎士団の昇格試験のとき……」
そこまで言うと、彼女の身体が大きく震えた。もう一度、カーティスを上から下までじっくりと視線を走らせ、下腹部で止まる。