人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「そんなの、あるんですか?」
 なぜかルシアのほうが目をきらきらと輝かせている。
「いや、ない。冗談だ……」
「期待したのに、騙されました」
「すまん。だが、食べたいのであれば、そのうち魔獣を捕まえてご馳走してやる」
「カーティー、しゅごいね」
 カーティスは、話が弾んだことに満足した。
 ククトへ行ってからは、女性や子どもと話をしたことなどほとんどない。だから、何を話題にしたらいいかがわからないというのが本音であった。
「あの、殿下」
 ルシアが遠慮がちに声をかけてきた。
「もしかして、魔獣の血って手に入りますか?」
「魔獣の血?」
「はい。魔獣の血は解毒薬に使えるので。ちょっとほしいなぁ、なんて……」
 もしかしてこれは、彼女とお近づきになれるチャンスではないのだろうか。
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