人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!

4.

「わかった。次、魔獣を討伐したときは、魔獣の肉と血を横流ししてやる」
「その言い方は、ちょっとどうかと思うのですが……」
「冗談だ。討伐した魔獣は、基本的には処分される。討伐した証として尻尾さえ残しておけばいいんだ。だから、肉を食べても問題はないし、魔獣の血だけ抜いても大丈夫だ」
「でしたら、是非ともお願いします」
「ママも、まじゅーのおにく、たべたい? カイル、おにく、たべれる?」
「ああ。食べれる。俺が料理してやる。魔獣料理は得意なんだ」
 くすっとルシアから笑みが漏れた。
「ん? どうかしたのか?」
「いえ、殿下が魔獣料理。ちょっと想像したら……ふふっ」
「そうやって笑っていられないくらい、美味しい料理を作ってやる」
「楽しみにしてます。ね、カイル」
「たのしみ」
 もしかしたら、ルシアの笑顔を見たのは初めてかもしれない。
 パーティーのときも、彼女はどこか緊張していた様子であったし、治癒院で再会したときも、彼女は怒ったような表情をしていた。
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