人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「カイルはどれを作ったの?」
「カイルはね、はっぱをちぎったの」
 はっぱとは、サラダに使われているレタスのことだろう。
「美味しそうね」
 ルシアは早速サラダに手を伸ばす。
 テーブルの上には、サラダ以外にも、パンが焼かれ、スープと肉の照り焼きまで並んでいる。
「あとね。パンをこねこねしたの」
 今までカイルが食事の準備を手伝ったことがあっただろうか。
 いや、いつも時間のないなか食事の準備をしていたから、カイルが側にいるだけで邪魔になったのだ。
 それなのにカーティスは、カイルと一緒に夕食の準備をしてくれた。
 ちょっと、いや、ものすごく悔しい。
「そのパン、カイルがくるくるしたの」
 パンを丸めたと言いたいのだろう。
 パンをちぎり口の中へいれると、小麦粉の香りとほのかな甘みが広がる。
「美味しい!」
「まま、おいしい? カイルのつくったパン、おいしい?」
「美味しい。おかわりしたくなっちゃう。また、ママに作ってくれる?」
「でもカイル。ひとりじゃつくれない。カーティーもいっしょ」
「また、一緒に作ろうな」
 カーティスの言葉に、カイルは元気よく「うん」と頷いた。
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