人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
第九章:高貴な方のようですが顔は『∵』です

1.

 夕食を食べ終えようとしたころ、ルーファが戻ってきた。その顔はげっそりとしていて、いつもの覇気がない。
「あ、お義父さん。お帰りなさい。夕飯は?」
「あぁ、いただこう。お腹が空いた……」
「お義父さん……驚かないでね?」
「何が、だ?」
「じいじ、カイルがつくったパン、たべて~」
 カイルの言葉に、疲れた表情をしていたルーファの顔が、一気に華やいだ。
「驚くなってそういうことか? じいじ、驚いたなぁ。カイルが作ったのかい?」
「……っていうよりは、殿下なんだけど……」
 カーティスの隣に座ったルーファは、顔を真横に向けてから、目の前の料理に視線を落とす。
「殿下が……まさか。逆恨みで毒など……」
「お前でもあるまいし。いれるわけがないだろう? いいから、さっさと食え。それとそれはカイルが作ったんだ」
「じいじ、カイルがパンくるくるしたの」
「おお、とっても美味しそうなパンだなぁ。じいじも疲れが吹っ飛ぶなぁ」
 ルーファのじじバカが炸裂し始めた。
 それでもお腹が満たされてくると、ルーファの表情に陰りが見え始める。
「ルシア……今後のことだが……」
 今後のこと。つまり、今後の治療方針についての相談だろう。
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