人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
 次々と方針が決まっていく。それだけこの状況は異常なのだ。
「できれば、ルシアにも手伝ってもらいたい。ホレスとも話をしたが、やはりこの数は異常だ。王宮治癒師からも人は出すと彼も言ってはいたが、それでも一人でも多く人手が欲しいと」
「ええ。もちろん。私も治癒師としてできることをしようと思う。だって……」
 そこでカイルに顔を向けた。ニコニコと笑いながら、デザートのゼリーを食べている。
 彼に聞かれてはならないような、そんな気がした。ルシアは声を落とす。
「麻薬中毒の患者には共通点があったでしょう?」
 おそらく十歳以下の男児。年齢については、もう一度記録簿を確認する必要はあるだろう。ただ、それくらいの年齢の男児のみだったのだ。
 ルシアの言葉に、ルーファもカーティスも首を縦に振った。 
「だが、カイルは?」
 ルーファは目を細くした。
「殿下に頼んだわ。私たちがあちらで仕事をするなら、カイルも同じ場所にいたほうが安心だもの。それに、殿下の側にいたほうが、カイルも安全だと思う」
「ルシア。それは……」
 そこでルーファも言いよどむ。
「カイル。明日から、じいじもままも、お仕事になっちゃうの」
「カイルは、おばちゃんのとこにいく?」
 ちょっとしたときに、カイルを預けている向かいの家の婦人のことだろう。
「ちがうわ」
 ルシアは首を横に振る。
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