人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「ホレスとも相談したのだが。治療の拠点を二カ所に分散させると効率が悪い。だから、お祭りの期間中は、こちらを閉めて王宮での治療に集中したほうがいいという話になった」
「だけど、この治癒院は」
「ルシアの言いたいこともわかる。だけど、こんなときだからこそ、王宮と協力しなければならないし、誰でもあそこで治療を受けられるようにしなければならないんだ」
「こんなときだからこそ、ここに助けを求める人だっているわけでしょう? ここに来て、誰もいなかったらどうするの? 必死の思いでやってきて、その状態で王宮に行けって言うの?」
 やっとの思いで足を運んだ治癒院が閉まっていた。それを知ったら、治療を必要とする患者はがっかりするのではないか。
「だったら、俺たち騎士団が協力する」
「殿下?」
 カーティスの言葉の意味がわからない。騎士団が協力すると言っても、彼らは治癒魔法は使えないし、適切な薬を与えることもできないだろう。
「治療を必要とする者がここに来たら、俺たちが患者を王宮にまで運ぶ」
「え? ですが、大通りはお祭りで、制限されていますよ?」
「有事の際に使ってもよい裏道がある。それを利用すれば、患者はすぐに王宮へ運ぶことが可能だ」
「もし、患者が暴れるようであれば、睡眠薬をお使いください。これは、私の名で許可を出しておきますから」
「助かる」
 ルーファが提案すると、カーティスも頷いた。
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