人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「お義父さんは……また陛下たちと飲んできたの?」
 ちょっとだけお酒の匂いがする。
「少しだけな。私たちにだって思うところはあるんだよ……」
 ははっと力なく笑う。
「お義父さん。水でも飲む?」
「そうだな。酔い覚ましにでももらうか」
 ルーファはどさりとソファに身体を預けた。やはり疲れているのだろう。
「はい」
「あぁ、ありがとう」
 グラスには少しだけ水滴がつき始めている。
「お義父さん……あの魔薬中毒の件なんだけど……」
「成分分析の結果は明日の朝には出るだろう。私は間違いなくあのクッキーが怪しいと思っている。そうなれば、すぐさまその露店に調査に入ってもらおうと思っている。祭りも終わりの時期だしな。早いところではもう露店も撤収している」
 今日で祭りも七日目に入った。あと三日で賑やかな時間は終わってしまう。
「どうして、小さな男の子ばかり症状が出るのかしら? あのクッキー。ものすごく売れていたのよ? 他にも食べてる人がいるはずだと思うの」
「ルシアの言うとおりだ。記録簿を確認したが、症状が出ているのは二歳から七歳くらいまでの男児。これは魔薬の量と種類によって、狙いを定めることが可能だ……」
「やっぱり。その人たちの狙いは小さな男の子ってことなのね?」
< 198 / 252 >

この作品をシェア

pagetop