人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!

2.

「あ、はい。あの、殿下たちがそれでいいとおっしゃるのであれば、私からは何も……」
 言えない。
「あとはね。ばあば」
 ここまできたらルシアだってわかる。ばあばは王妃のことだ。
「本人が喜んでいた……。孫ができたら、そう呼んでもらいたかったらしい……」
「左様ですか……」
 カイルの物怖じしない性格のせいなのかなんなのか。
 だが、嫌われていないことだけは確かである。
「あの……あれだ……。ルシアはやっぱり花とか、好きなのか?」
 突然の問いに、ルシアは首を傾げる。
「いや。王宮治癒師であったことを考えると、あまり外に出たことがなかったのだろう?」
「そうですね。商人がきたときくらいは、部屋から出ましたけれども」
「まぁ。王宮の庭も広いから、気分転換にどうかと思っただけだ。カイルと散歩でもしてくるといい」
「あ、ありがとうございます」
 ずっと建物の中にいるのは、気が滅入ってしまうと思っていたところだ。
「だが、その……カイルの立場を考えると、いくら王宮の庭であっても護衛がつくと思うのだが、それは大丈夫か?」
 また、いつもの生活とは異なる条件だ。
 それに慣れなければならないのだろうか。
 と考えて、ふと気づく。ルシアはカーティスとの生活を受け入れようとし始めている。
 ぶんぶんと頭を振った。
「嫌、だよな?」
「いえ。ここにいる間はここの規則に従います」
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