人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
*~*~*~*~*

 ルシアはカーティスの背を見つめていた。
 クレメンティはあっちとこっちを行ったり来たりして、中の情報をこちらに教えてくれる。
 クレメンティがいてよかった。心からそう思う。
《大丈夫なの? 相手は五人以上もいるのよ》
「多分、大丈夫。すぐに応援がきてくれる」
《すごい、自信。あの変な隠し扉、みんな見つけられるの? 今まで誰にも知られなかったわけでしょ?》
 ルシアは勝ち誇ったような笑みをクレメンティに向けた。
《うわ~その笑顔。なんか、怖い。怖いよ~》
 言いながらクレメンティは扉をすぅっと通り抜けた。先に行って、向こう側の様子を確認しているのだろう。
「ルシア……準備はいいか?」
「……はい。この扉の奥にもう一枚、扉があります。その向こう側にカイルたちがいるはず……」
 それがクレメンティの偵察の結果だ。あまり長居すると、例の魔法使いにバレちゃうからと、すぐに戻ってきた。今は、扉の一枚向こう側で待っているのだろう。
 カーティスが扉の円筒状のドアノブに手をかける。ひねると動いたようだ。
 彼が頷いたのは「いくぞ」という意味だろう。ルシアも頷き返す。
 ギィッと金属製の重い扉が、音を立てた。この音で相手に知られてしまうのではないかと、心配になるくらい。それでも、地下道には水の流れる音で打ち消された。
 身体をするっと滑り込ませて、静かに扉を閉める。
《ルシア、待ってたよ。今ならまだ、あいつらがいる。だけど、場所を変える相談をしてるから。なんか、あっち側にも抜け道があるみたい。いくなら今よ》
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