人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
「おめでとうございます。って、今、言うのも変ですね」
 カイルがなぜかパチパチと拍手している。おめでとうという言葉に反応したのだろうか。
「あのとき……俺の食事に媚薬を持ったのは、フランクだった……」
「理由は、やはり?」
「ああ、そうだ……そう思ってもらえるのはありがたいことかもしれないが……俺は、王の器ではないと自覚している」
「そうですね。私もそう思います」
 あっさりと肯定されてしまうと、カーティスもどう返したらいいかがわからない。
 だが、言いたいことは一つしかない。いや、二つか。
「え、と。まあ。そんな俺だが……ルシア、どうか俺と結婚してくれないだろうか? 俺の家族になってほしい」
「いいよ」
「え?」
「カイル。勝手に返事をしないで。カーティスはママに言ったのよ」
「だって。カーティーはカイルのパパでしょ? ママがそう言ったでしょ? だからママとカーティーはかぞくでしょ?」
「そうだけど……。カーティス、もう一度お願いします」
 まさかのやり直し。
 ルシアにそう言われてやや混乱したものの、今度は彼女の手を取ってまっすぐに鈍色の瞳を見つめた。
「ルシア、俺と結婚してほしい。俺の家族になってくれ」
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