人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
 王都の中心部のレンガ路は、真っ直ぐに王宮へと続いている。幅が広いのは、馬車や荷車が通るため。騎士団が王宮へ向かって進み始めれば、その道の両脇に人々が立って、歓声をあげる。
「今からこれでは、凱旋パレードと祝賀会はどうなるんでしょうね」
「そう言うな。俺らが無事に戻ってきたのを喜んでくれているんだから。他人の好意は素直に受け取っておけ」
「ま、そうですけど」
 デレクはただ照れていただけ。それを隠すために、そんなことを口にするのだ。カーティスが変人であるなら、デレクはひねくれ者だろう。
 王宮の跳ね橋が架けられ、第二騎士団はそれをゆっくりと渡る。王宮へと入ると、出仕している者たちの視線を集めた。予定ではこのまま国王の謁見室へと入り、報告をする手はずになっている。
「カーティス殿下」
 騎士服の姿であるカーティスをそのように呼んでくるのは、宰相くらいである。彼こそが、カーティスを次期国王にと目論んでいる一派の筆頭なのだ。
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