人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!

2.

 じろりと視線を向ける。
「陛下がお待ちかねです。早く、お顔を見せて、安心させてください」
 そう言いながらも、誰よりも安堵しているのは宰相だろう。カーティスが生きてさえいれば、王位継承権はアーロンだけのものではないからだ。
 繊細な金色の模様が施されている藍白の両開きの扉は、カーティスたちが近づくと勝手に開いた。
 赤い絨毯の先には玉座があり、国王が堂々と座っている。
 前に進み出たカーティスは膝をつく。
「第二騎士団長、カーティス・エドガー・ルルー・ベスティア以下、全員無事に帰還いたしました」
「大儀であった」
 四年ぶりに見た国王は、老けた。目尻にもしわが浮かぶようになっている。
 カーティスは事務的に報告書を読み上げた。国王も決まり切った言葉しか口にしない。とにかくカーティスは早くこの場から去りたかった。後ろに控えている騎士たちもそうだろう。少しでも早く帰って、家族とともに時間を過ごしたいはずだ。
 そんな気持ちのなか、その場をなんとかやり過ごし、王宮の隣にある騎士棟へと足を向けた。ここが騎士団本部ともいえる建物である。そのまま五つの騎士団をとりまとめている総帥の元へと足を運ぶ。帰還した報告と、国王との謁見が終わった報告をするためだ。
 総帥はそれぞれの騎士にねぎらいの言葉をかけた。それが終わって、やっと解放された。
 第二騎士団の面々は解散させ、帰らせる。これで彼らも、会いたかった家族と過ごす時間が持てるに違いない。
 カーティスは、執務室へと向かった。四年前にこの部屋を与えられてから、訪れたのはほんの数回。騎士団長になってすぐに、ククトへの赴任が決まったからだ。
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