人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
第三章:パン屋で怪しい男『∵』に会いました
1.
カイルは、マリからもらったパンを気に入ったようだ。ルシアは散歩がてらマリのパン屋に足を伸ばすことにした。
「うしさん、パン」
先日、マリが新作だと言ったパンは、動物の形をしたパンだった。見た目も可愛らしくて、食べるのがもったいないほど。
「そうね。牛さんのパンを買っていきましょうね」
ククトの街に派遣されていた騎士団は、噂通り戻ってきた。それを称え、明日は凱旋パレードがあるらしい。その準備で、街中が浮き足立っているようにも見える。
「お祭りも楽しみね。パレードも見に行きましょうね」
祭りもパレードも、今までのルシアには縁のなかったもの。それが待ち遠しい気持ちもあった。街がお祭りの準備をしている様子を見るのも心が躍る。
マリのパン屋の前には、小さな露店が建ち始めていた。祭りの期間中はマリも露店を出すと言っていた。よく見れば、どの店も露店の準備をしている。
「ぱんやさん、ここ」
何度か足を運んだことのあるマリの店を、カイルはしっかりと覚えていた。
扉を押し開けると「いらっしゃいませぇ」という声と同時に、パンの香ばしさが出迎える。
「あら、カイルちゃん。いらっしゃい」
カイルに気がついたマリは上機嫌である。
「うしさんパン、ください」
「牛さんのパンは、そこにあるよ」
「うしさん、パン」
先日、マリが新作だと言ったパンは、動物の形をしたパンだった。見た目も可愛らしくて、食べるのがもったいないほど。
「そうね。牛さんのパンを買っていきましょうね」
ククトの街に派遣されていた騎士団は、噂通り戻ってきた。それを称え、明日は凱旋パレードがあるらしい。その準備で、街中が浮き足立っているようにも見える。
「お祭りも楽しみね。パレードも見に行きましょうね」
祭りもパレードも、今までのルシアには縁のなかったもの。それが待ち遠しい気持ちもあった。街がお祭りの準備をしている様子を見るのも心が躍る。
マリのパン屋の前には、小さな露店が建ち始めていた。祭りの期間中はマリも露店を出すと言っていた。よく見れば、どの店も露店の準備をしている。
「ぱんやさん、ここ」
何度か足を運んだことのあるマリの店を、カイルはしっかりと覚えていた。
扉を押し開けると「いらっしゃいませぇ」という声と同時に、パンの香ばしさが出迎える。
「あら、カイルちゃん。いらっしゃい」
カイルに気がついたマリは上機嫌である。
「うしさんパン、ください」
「牛さんのパンは、そこにあるよ」