人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!
 にたりと笑ったルーファの顔を見て、カーティスは瞬時に悟った。
 これは、確信犯である。
「俺は……ルーファをお義父さんと呼んでいいのか?」
「何をおっしゃっているのか、さっぱりわかりませんね。おい、ルシア」
「なに? お義父さん」
「お前に紹介したい人がいる」
「どちらさま?」
 つかつかと彼女は歩いてきた。右手はしっかりと男の子の手を握っている。
 エメラルドグリーンのドレスは、優しげな彼女によく似合っていた。襟と袖にはたっぷりとレースがあしらわれているが、全体的にはすっきりとしたシンプルなデザインのドレスである。男の子もジャケットを羽織り、蝶ネクタイをしている。
「ルシア、第二騎士団長のカーティス殿下だ」
「な、ちょ。お義父さん。そんなすごい方を、そんなさらっと紹介しないで。心の準備というものができていないでしょう?」
 彼女は顔を上下に動かして、カーティスの足の先から頭のてっぺんまでをじっくりと見つめていた。
「はじめまして、ルーファの娘のルシアです。こちら、私の息子のカイルです」
 周囲がざわついた。 
< 76 / 252 >

この作品をシェア

pagetop