人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!

4.

「いや、ルーファも元気そうでなによりだ」
 通された部屋では、天井のど真ん中に煌々としたシャンデリアがぶら下がっていた。おだやかな灯火に照らされ、室内は黄金に見える。賓客をもてなす部屋である。
「まぁ、座れ」
 国王が一人がけの椅子にゆったりと腰をおろした。カーティスは悩んだあげく、その向かい側の三人掛けのソファに座る。一人分の間があいて、ルーファが隣に座った。
 国王が目配せをすれば、ワゴンがやってきて軽食と飲み物が白いテーブルの上に並べられていく。
「ああいった賑やかな場よりも、こうやって静かに飲むほうが好きなのだよ」
 国王が笑って、グラスを手に取った。
「では、我が息子の帰還を祝って」
 グラスを掲げる。
 先ほど、三杯も飲んでしまったカーティスは、今は水が飲みたい気分だった。一口だけグラスに口をつけると、水がほしいと侍従に告げる。
「どうした、カーティス。父親たちとは酒が飲めないと?」
 国王の言葉にドキリとする。国王は血のつながりのある父親に間違いはないが、ルーファは義理の父になる。かもしれない。
「違います。先ほど、一気に飲み過ぎました。やけ酒しすぎました」
「陛下。どうやらカーティス殿下は、我が娘に何もお伝えできなかったようなのです」
「カーティス。我が息子ながら恥ずかしい。ただのクズではなくへたれクズだったのだな」
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