愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 清隆がリビングへ顔を出したのは、ちょうど雅の前にハーブティーが置かれたタイミングだった。

「おはようございます」
「ああ。おはよう」

 雅の挨拶に対し、清隆も挨拶の言葉だけを返すと雅の目の前へと腰かける。雅がゆっくりとハーブティーを味わう中、清隆は雅には目もくれずにただ黙々と食事をとりはじめた。

 非常に落ち着かない。干渉しないよう言われているから、雅から何かを語りかけるつもりはない。だが、自分の夫が目の前にいるのに好き勝手に振る舞うわけにもいかず、雅は味のしなくなったハーブティーを口にしては、窓から見える景色に目を向けていた。

 一方の清隆はというと少しも雅のことは気にしていないようで、あっという間に食事を終えるとすぐに席を立った。

 そして、去り際にようやく雅に目を向けてきた。

「今日からしばらくは帰りが遅くなる。君は先に休んでくれて構わない。それから日中は連絡に応じられないから、何かあれば鳴海(なるみ)に言づけておいてくれ」

 鳴海は清隆付きの秘書の男性である。事前に紹介され、連絡先も教えてもらっている。

 雅が「はい」と答えれば、清隆はもう雅には構わず、すぐにリビングをあとにした。
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