愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 清隆が雅に告げた言葉は実際にその通りだった。この日から、雅が起きているうちに清隆が家に帰ってくることはなかった。

 初日こそ、先に寝るのもいかがなものかと思い、自室で清隆が帰ってくるのを待っていた雅だが、日付が変わっても帰ってくる気配がなかったから、しかたなく先に眠りについた。それは翌日以降も同様である。さすがにそれが数日続けば、待っていてもしかたがないと、雅は自分のタイミングで就寝するようになった。

 清隆とは、朝になれば顔を合わせることもあるが、それも毎日のことではない。朝食時に時折リビングで顔を合わせるだけという関係が続いている。

 雅は日中はほとんどずっと家に一人でおり、大してやることもない。清隆は好きに過ごしていいと言っていたが、そんなふうには育てられていないから、雅にはどう好きに過ごせばいいのかわからない。とはいえ、ただぼーっとしているというのも落ち着かず、雅は鳴海や義母にお願いをして、会社のことや加々美家に関することを学ぶようになった。とにかく妻としての役割を果たすために、今できることをしようと思ったのだ。

 だが、一番に果たすべきと思われるそれは一向に訪れない。ほとんど家にはいない清隆に、雅は次第に清隆の考えは違うのかもしれないと思いはじめた。

 義母からははっきりと跡継ぎのことを言われていたから、清隆も同じ考えだと思っていたが、これまで清隆はただの一度もその話をしていない。それにこうも毎日帰りが遅いと仕事以外で遅くなっているという考えも浮かんでくる。

 もしかしたら清隆は雅との間に子供を作る気はなく、愛人でも囲っているのかもしれない。そんな新婚夫婦には似つかわしくないことまで想像しはじめた雅だが、同居から約一ヶ月後のある日に、雅のその考えは間違いだったと示された。
< 15 / 177 >

この作品をシェア

pagetop