愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
***

 目が覚めて一階へ下りると、誠一郎はすでに起きて身支度まで済ませていた。

「姉さん、おはよう」
「おはよう、誠一郎さん。ごめんなさい、結局朝まで使ってしまって」
「そんなこと気にしなくていいよ。具合はどう? 顔色は少しよさそうだけど」
「ええ。昨日に比べれば随分とよくなったわ。ありがとう」
「それならよかったよ」

 誠一郎との優しいやりとりに心が和む。自然と笑みが浮かぶが、誠一郎のほうはすぐにその表情を引き締め、突然雅へ向かって謝罪をしはじめた。

「あのさ、姉さん、ごめん」
「え? どうしたの?」
「実は昨日、姉さんが寝ている間にお義兄さんと電話で話したんだ」

 雅に少しの緊張が走った。清隆とどんな話をしたのだろうかと少しだけ不安になったのだ。

 誠一郎は雅のその不安を解消するように、昨夜のやりとりについて雅に語って聞かせてくれた。

 清隆は今回の件を知らなかったこと、雅のことを心配していたこと、雅へ何度も謝罪していたこと。そんなことを聞かされれば、やはり自分の信じるべき人は清隆だと思えた。二人の間の想いは本物なのだと確信できた。

 もうすぐにでも清隆に会いたいという気持ちが募るが、しばらくはここにいたほうがいいとう話も聞かされ、雅は残念に思いながらも、雅のことを考えてのその提案にしっかりと同意を示した。
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