愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 人の近づく気配がして、清隆の胸元から顔を上げてみれば、義父がすぐ目の前に立っていた。

「雅さん。身内がひどいことをして申し訳ない。もう二度とあなたと接触させないと誓おう。本当に申し訳ない」

 義父は雅に向かって深く頭を下げている。雅は義父のほうへ向き直り、慌ててその謝罪を止めた。

「お義父さまは悪くございません。どうぞ頭をお上げになってください。助けていただきありがとうございます」
「いや、娘を助けるのは当然のことだ」
「お義父さま……」

 急に父親らしい父親ができたような心地になって、とても心がこそばゆい。その気持ちが表に現れて、雅が思わずはにかめば、義父も優しく微笑んでくれた。

「雅さん、いろいろと思うところはあるだろうが、どうか清隆だけは見捨てないでやってください。よろしくお願いします」
「そんな、見捨てるだなんて。私が清隆さんのそばにいたいと望んでおります」
「ありがとう、雅さん。清隆、あとのことは私に任せて、お前は雅さんを連れて帰りなさい」
「はい。ありがとうございます」

 清隆に促され、雅はすぐにこのマンションを清隆と二人で出た。長く苦しい地獄から雅はようやく抜け出せたのだ。
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