愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 雅は有名な私立中学へ入れられ、様々な習い事をさせられ、厳しいマナー教育も受けるようになった。交友関係も厳しく制限され、自由に振る舞うことは許されなくなった。父は雅を立派な淑女へ仕立て上げるべく、それは厳しく雅を躾けたのだ。

 まだ幼かった雅にとって、そんな日々はあまりにも窮屈で、毎日逃げ出したくてたまらなかった。友達と遊びたい、習い事なんてしたくない、そうやって初めのうちは我儘を言ってみたりもした。けれど、雅が思い通りにならないと、父は力に物を言わせて雅をねじ伏せてきた。そんな父が雅は怖くて怖くてたまらなかった。次第に諦めることを覚えた。女で子供である雅が父に勝てるはずもないのだ。雅はただ父の言うことに黙って従い、父の怒りを買わないことだけを意識して過ごすようになった。

 父からは、笹崎紡績にとって益のある人と婚姻関係を結ぶことが、雅に与えられた使命なのだと徹底的に刷り込まれた。本当にそのためだけにこれまで生きてきた。だから、どんな結婚相手だろうと、雅はその結婚を承諾する他ない。相手が大企業の御曹司であることに腰は引けるが、雅はこの結婚を上手くやり遂げなければならないのだ。
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