一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「……堀田さんはうちの息子をどう思ってるか聞いてもいいか」
「……はい。院長先生」

 学生時代の片思い相手であり、今も彼の事は好きだ。そして彼への憧れもある。私はこの3点を成哉の両親に告げた。
 このピリッとした空気に質問内容に私の回答……なんだか就活での面接を思い出す。

「成る程ね」

 成哉の父親はうんうんと何度も頷いた。

「昔から成哉の事好きだったのか」
「はい。学生時代から好きでした」
「じゃあ、なんで告白しなかったんだ?」
「藤堂くんはモテモテで、藤堂くんを好きな女子は結構いたので……私には当時、そんな勇気は無くて。それなら胸の中にしまっておこうと思ったんです」
「もしかしていじめられてた?」

 と、成哉からいきなりそう問われた私に成哉の両親からは一気に心配そうな目線が飛んできた。

「や、いじめは無いです。陰口言われないようにするのがやっとというか……」
「女の子はそういうのがあるわよねえ」
「本当にそうなんです!」
「ほんとほんと! リーダー格の女子ってほんといや! 怖いもの!」

 ここで私は成哉の母親と意気投合したのか、カーストトップな一軍女子への愚痴やあるある話で盛り上がりが続いた所で成哉の父親が控えめにそろそろ本題に戻ってもいいかな? と口を開いたのだった。

「……熱くなっちゃったわね」
「いえ、すみません。こちらこそ……」
「では、本題に戻ろう。成哉と堀田さんの気持ちは分かった。結婚して幸せな生活を送ってほしい」

 成哉の父親からの温かい言葉を受け、私の胸の中には嬉しさで一杯になった。そのせいか、胸の中が熱くなる。

「愛海! 良かった!」

 成哉は半泣きの状態で嬉しそうに笑いながら私を抱きしめる。そんな彼に私も涙が出そうになった。
 片思いが実るってこんなにも熱くて涙が出そうになるくらい嬉しい事なのか。

「ありがとうございます……!」

 私は成哉と彼の両親に何度も何度も感謝の言葉を告げたのだった。
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