一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 成哉の母親はボストンバッグをベッドの左側に設置されているソファに置いた。それにしてもこの部屋、個室とはいえ個室の病室のイメージを打ち破る程ものすごく広い。広すぎる。

(お金とかどれくらいかかるんだろ)

 そう考えただけで背中が寒くなりそうな予感がしたので、止めて置いた。

「ねえ成哉。そういえばここ、特別室よね?」
「うんそう。ここたまたま空いてたからここにした。特別室ならセキュリティも普通の個室より厳重だし、広々としてるからリハビリにももってこいかなって」
「お金は?」
「大丈夫。そこは父さんのおかげで気にしなくていいから」
「……成哉さん、本当に大丈夫?」
「ほら、愛海ちゃんも心配になってるじゃない」
「大丈夫だって。父さんが院長だからその特権。この特別室自体予約が無いと使えないんだから」

 成哉が大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう。それにしてもリハビリやセキュリティも考えてこの特別室に入れてくれたとは……。

「成哉さん、ありがとうございます」
「ううん、これくらいなんともないよ。お金の事も心配しなくていいから愛海はリハビリに集中してほしい。リハビリしっかり取り組めばまた歩けるようになるから。想定よりも軽度だったのもあるし」
(これで軽い方だったのか)

 その後、成哉の母親はまた来るからと言って退出していく。去り際彼女はまことの面倒は私とお手伝いさんに任せて欲しいと申し出てくれ、更に何かあれば成哉を頼るようにと言い残してくれた。
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