彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
運ばれてきた永峰さんは、素早いAEDの使用で、心肺停止の状態から蘇生していた。
搬送中に救急隊員から送られてきたモニター心電図の検査結果確認する。

動脈硬化により、冠動脈の主要3枝に血栓ができ、完全に詰まっている状態だ。虚血性心疾患、心筋梗塞。

開胸し、詰まった冠動脈の先に迂回路をつくる冠動脈バイパス手術が最適だと判断した。

俺がアメリカで磨いてきた技術。自信はある。

詰まった冠動脈の先に体の別の部分から取り出した血管(グラフト)を縫い合わせていく。
グラフトには、胸骨の裏を走る内胸動脈を使用することにした。他に、脚の大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)、手首の橈骨動脈(とうこつどうみゃく)を使うこともできるのだが、比較的採取しやすい大伏在静脈は、将来閉塞してしまう危険性がある。10年を経ても90%以上の開存率が認められている内胸動脈の方が、成功すれば長期生存が期待できるのだ。それに、技術職人である永峰さんの事情を鑑みれば、橈骨動脈よりも内胸動脈がベストだ。
人工心肺を使うことにより、ごく稀に発生する脳血管障害や腎臓障害、重症不整脈といった合併症も避けたい。

俺の出した結論は、内胸動脈を使用したオフポンプ冠動脈バイパス手術。
俺の持てる術をフルに活かし、必ず助ける。
ここには最高の医師、麻酔科医、看護師、臨床工学技士が揃っている。最強のハートチームだ。

よし、いくぞ!

俺は永峰さんの胸に、メスを入れた。

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