彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「ねぇ、桃園さん」
「はい」
「よかったら、今から少し弾いてみてくださらない?」
「えっ⁉」
どうしよう…… 母の演奏を聴いていたとはいえ、人様の前で弾ける気がしない。しかも、高椿グループの創立100周年パーティーときた。全く自信はないが、私の演奏を知らない誰かに評価してもらうのも良い経験になるかもしれない。昭二おじさんは母のことを話したのだろうか。いや、話していない気がする。もし私が母の娘だと知っていたのなら、コンクールとは違うなんてことは言わないだろう。
「永峰社長がね」
昭二おじさん?
「社長がおっしゃったの。自分は貴女の弾くピアノが好きだから、私にも聴いて欲しいって」
昭二おじさんが知っている私の演奏といえば、がっちゃんに聴かせるために弾いた子供向けの曲か、ハッピーバースデーだけど……
「そう、なんですか?」
「ええ、優しい顔でおっしゃってたわ。だから、私にも聴かせて欲しいの。永峰社長にあんな表情をさせる貴女のピアノを」
昭二おじさんはいったいどんな顔をしていたんだろう。私の前ではいつも優しい顔をしているけど……
あぁ、そうだった。作業に入ると別人が宿ったかのように厳しくなるんだった。現場では鬼軍曹と呼ばれていることを忘れていた。
高椿さんは、鬼軍曹の永峰社長しか見たことがないのかもしれない。
断ってしまって昭二おじさんの立場を悪くするわけにはいかないし、少しだけ弾かせてもらおうか……
私は、高椿さんの崇高さ漂うキリッとした目を見つめた。
「はい」
「よかったら、今から少し弾いてみてくださらない?」
「えっ⁉」
どうしよう…… 母の演奏を聴いていたとはいえ、人様の前で弾ける気がしない。しかも、高椿グループの創立100周年パーティーときた。全く自信はないが、私の演奏を知らない誰かに評価してもらうのも良い経験になるかもしれない。昭二おじさんは母のことを話したのだろうか。いや、話していない気がする。もし私が母の娘だと知っていたのなら、コンクールとは違うなんてことは言わないだろう。
「永峰社長がね」
昭二おじさん?
「社長がおっしゃったの。自分は貴女の弾くピアノが好きだから、私にも聴いて欲しいって」
昭二おじさんが知っている私の演奏といえば、がっちゃんに聴かせるために弾いた子供向けの曲か、ハッピーバースデーだけど……
「そう、なんですか?」
「ええ、優しい顔でおっしゃってたわ。だから、私にも聴かせて欲しいの。永峰社長にあんな表情をさせる貴女のピアノを」
昭二おじさんはいったいどんな顔をしていたんだろう。私の前ではいつも優しい顔をしているけど……
あぁ、そうだった。作業に入ると別人が宿ったかのように厳しくなるんだった。現場では鬼軍曹と呼ばれていることを忘れていた。
高椿さんは、鬼軍曹の永峰社長しか見たことがないのかもしれない。
断ってしまって昭二おじさんの立場を悪くするわけにはいかないし、少しだけ弾かせてもらおうか……
私は、高椿さんの崇高さ漂うキリッとした目を見つめた。