彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
導かれる運命
高椿沙織さんに連れられ足を運んだのは、桜坂エリアにある、有名デザイナーのドレスショップだった。
ウエディングドレスはもちろん、イブニングドレスやアフタヌーンドレスも豊富に揃えられている。多くのパーティーが開催されるベリが丘ならではだろう。

通り沿いから眺めるだけだった敷居の高い店内に、作業着姿といった似つかわしくない格好でソファーに座らされている。

ホテルを出る前、沙織さんがパーティー用のドレスを私にプレゼントしたいと言い出した。母のドレスを着るつもりだと丁重に断ったが、それでは自分の気が済まないと、お互い一歩も引かないやり取りがあった。
結果、私が根負けしたというわけだ。
そして、根負けしたついでに、私は沙織さんの妹になって欲しいと頼まれた。

「これから桃園さんではなく、美音ちゃんと呼ぶから、私のことはお姉ちゃんと呼んでね、うふっ」と爽やかな笑みを向けられたが、さすがにお姉ちゃんはどうかと思い、沙織さんで勘弁してもらった。 
沙織さんには、兄、姉、弟さんがいるらしいのだが、どうしても妹が欲しかったのだそうだ。兄妹コンプリートでも目指しているのだろうか。

彼氏はいるのかと問われ、いないと答えると、

「弟のお嫁さんになるのはどう?お見合いしてみない?」と突拍子もない提案をされたが、なんとか笑って誤魔化し、今に至っている。
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