彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
バーラウンジを出たあと、高椿さんとロビーラウンジに戻り、昭二おじさんのもとへ向かった。

「永峰社長、作業中申し訳ありません」

「どうだったかな?」

「社長のおっしゃった通り、素敵な演奏でした」

「だろう?」

「まさか、矢吹玲子さんの娘さんだったなんて、ご存知だったんですか?」

「もちろん、親友夫妻の娘さんだからね」

「教えてくだされば良いものを」

「別に隠していたわけじないよ」

「でも、紹介してくださったこと、本当に感謝いたします」

「ということは、美音ちゃんは明日ここでピアノを弾くんだね?」

「えぇ、永峰社長も楽しみにしていてくださいね。明日、来ていただけますよね?」

「私なんかが出席してもいいのかい?一応出席で返事はしたんだが、妻はどうしましょうどうしましょうの繰り返しだよ」

昭二おじさんにも招待状が届いていたんだな。おばさんの動揺する姿が目に浮かぶ。

「もちろんです。出席していただかなければ祖父と父に叱られますわ」

「じゃあ、遠慮なく出席させてもらうよ」

「お待ちしています。それと、今からまた桃園さんをお預かりしてもよろしいですか? 」

「私は構わないが、美音ちゃんは大丈夫かい?仕事のことは気にしなくていいからね」

「社長が大丈夫だとおっしゃるのなら私は構いません」

「では、永峰社長、桃園さんをお預かりします。終業時間までには送り届けますので」

「あのっ、送り届けていただかなくても、私、社用車で来ていますし」

「美音ちゃん、それは誰かに乗って帰らせるから、鍵を預ろうかな」

「わかりました」

私は作業着の内ポケットに入れていた鍵を取り出し手渡した。
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