彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
「店長、彼女に似合うロングドレスを選んでくれないかしら。明日、高椿のパーティーでピアノを弾いてもらうの」

「かしこまりました。さぁ、こちらへどうぞ」

全面鏡の前に案内された私は、鏡のど真ん中に立たされた。私の身体にスタッフが次々とドレスを合わせていく。その中の数点を試着することになった。
沙織さんはその様子を真剣な面持ちで見守っている。
私が三着目を身に纏い、試着室から姿を見せると、沙織さんの表情がパッと明るくなった。

「うん、これね!これがいいわ!」

淡いダスティローズカラーのスレンダースタイルで、チュールスカートはゴールドグリッターが輝き、身頃はスパンコール刺繍レースの煌めいた上品なドレスだ。

「サイズもピッタリ!そのヒールもいただこうかしら」

「既製品ではありますが、あつらえた物のようですわね。本当によくお似合いです」

店長が鏡越しに微笑む。

私も、鏡の中の自分に見惚れてしまった。値段を想像するだけで恐ろしい。

「美音ちゃん、これでいいかしら?」

「こんな高価なものを本当によろしいのですか?」

「えぇ、もちろんよ。可愛い妹のためだもの」

「ありがとうございます」

「沙織様、妹さん、とは?」

店長の頭に "???" マークが見える。

「うふふっ、私の妹になってくれることになったの」

え⁉︎

「それはどういう……あっ!そういうことですか!シュンスケ様の!そういうことでしたか!それはそれはおめでたいことで」

ん?

今度は私の頭に "???" が浮かんでいる。

「店長、それは私の願望よ」

「あらまぁ、私はてっきり…… でも、こんなに素敵な女性なら、シュンスケ様の奥様には申し分ないですわね」

「でしょう?美音ちゃん、私は諦めないわよ!」

宣言されても困るのだが……

「あのぅ…… 諦めないと言われましても……」

「そうだわ!美音ちゃん、まだ時間大丈夫よね?」

ダメだ。何を言ってもスルーされそうな気がする。

「……はい」

「明日の打ち合わせをしましょうか。店長、このドレス、ホテルまで届けておいてくれないかしら」

「かしこまりました」

沙織さんの財布から、ステータスの高い人のみが持つことを許された黒いカードが姿を現した。
もうなんだか夢の世界にいるようだ。
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