彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
翌日、俊佑さんは時間通りに迎えに来てくれた。
沙織さんと同じく、これまたドイツ社のエンブレムだ。

車から颯爽と降りてきた彼は、髪をアップにした昨日のフォーマルスタイルとは打って変わって、ダークネイビーのテーラードジャケットウールと、テーパードパンツのセットアップにオフホワイトのタートルネックを合わせた出立ちだ。
カジュアルだけれど、品の良さはとめどなく溢れ出ている。
シークレットパーマだろうか、黒髪のミディアムスタイルも端正な顔を引き立たせていて、まるでファッション誌から飛び出してきたかのようなビジュアルだ。

「ホント、イケメンさん。仁君みたい」

母が耳元で囁いた。

母にとってイケメンの基準は父なので、"仁君みたい" その言葉に思わず顔が緩んでしまった。

俊佑さんが運転する助手席に座り、彼に視線を向けた。
鼻筋の通った横顔にうっとりしてしまう。

空港に到着し、二人で母を見送った。
母は終始笑顔で、別れるまで私の好きなものや苦手なものを俊佑さんに教えていた。

「俺もココア飲んでみたい」

遠ざかる母の背中を見送りながら呟く彼に、

「すっごく甘いですよ」

感情を込めて伝えると、突然母が振り返った。
何か言ったか?そんな表情を向けられ、聞こえていないはずなのに振り返るそのタイミングの良さに、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。

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