彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
鍵を目にした瞬間、あの日の情事が一気にフラッシュバクした。鍵を持つ手が震える。感情のコントロールが効かない。

「美音?」

震えが段々激しくなる。

「美音、大丈夫か?」

震えが止まらない私を、俊佑さんはギュと抱きしめてくれた。大きな手が私の背中を優しく摩る。
彼の鼓動を聴いていると、徐々に震えも治まった。

ソファーに座らされ、彼が膝をつき私と向かい合う。

「なにがあったのか話してくれないか?もしかして、あの日と関係が?」

あんなこと、話してしまっていいのだろうか。ずっと私のことを好きでいてくれた彼に、俊哉と付き合っていたことや、目の前で浮気され、不感症だと言われたことを……
話して不快にさせてしまったら……
そう思うと、話すことを躊躇ってしまった。
そんな私の心情を察したのか、

「大丈夫だよ。話してごらん。何があっても俺は受け止めるから。俺、嘘はつかない主義って言ったよね」

穏やかな表情をくれた。

私は意を決してあの日の出来事を包み隠さず話をした。私も嘘はつきたくない。

「ごめんなさい」

話を終えた私から一番最初に出た言葉だ。

「何故美音が謝るんだ」

「だって……だって私……」

「ん?」

純潔(きれい)じゃないから」

「だから汚れてるって?」

私はこくりと頷いた。

「そんな馬鹿な話はないだろう」

「え?」

「好きだったから手放した。それのどこが汚れてるんだよ。正直言うと、俺、今、嫉妬で狂いそうだし、怒りでどうにかなりそうだ。美音を傷つけたそいつも、自分の気持ちから逃げてた俺も許せない。俺がもっと早く君を見つけて気持ちを伝えていれば、そいつと出会うこともなく、傷つくこともなかった。ごめんな」

それは違う!心で叫びながら、必死に首を横に振った。
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