彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
そうしてやってきたのは、ベリが丘総合病院近くにある、モダンな佇まいのハイグレード低層マンションだった。
高級車が並ぶ地下ガレージに車を止める。
車を降りると、彼が私の手を握った。慣れた足取りで進む彼についてエレベーターに乗ると、5階フロアで停止した。エレベーターを降りてわかったことだが、玄関扉が一つしか見当たらない。開いたエレベータードアの先に、たった一つの重厚な玄関が存在を主張している。
ということは、ワンフロアに一部屋。なんと贅沢なのだろう。

彼によって重厚な玄関扉が開け放たれた。
広い!玄関なのに広い!広過ぎて音が響いている。
廊下を抜けた先のリビングも、高椿家とまではいかないが、かなり広い。大きな窓が部屋を囲っている。部屋全体もシックな色合いで統一されていて、まるでモデルルームだ。もうため息しか出ない。

「ここは?」

「俺の家」

え? 実家で暮らさないのかな?

「沙織に追い出された。兄さんが独身時代に使っていたのを譲ってもらったんだ。家具も揃っているし、モブ子さんが定期的に掃除をしてくれていたからすぐに住めるしね。まぁ、病院にも近いし、誰に遠慮することもない。それに……」

彼の端正な顔が近づく。

「手を出して」

「えっ……」

ポケットの中からなにやら取り出すと、差し出した手のひらの上に置いた。

合鍵だ。

「美音、君とここで暮らしたい」
< 98 / 151 >

この作品をシェア

pagetop