星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~【初期版】
 透明な肉汁があふれて来た。
「これで大丈夫ってこと?」
「そう、あとは皿に盛ってね」

 付け合わせを先に載せた皿に彼はフライ返しを使ってゆっくりとハンバーグをのせる。

「この肉汁も使ってソースを作ったりするんだけど、今日は簡単にケチャップソースで」
 器にケチャップとソースを混ぜ合わせてハンバーグにかけると、それだけで絃斗は目を輝かせる。
「そんな方法があるんだ」

 彼に笑って、ごはんをよそってテーブルに置く。サラダにハンバーグに付け合わせの野菜。キャベツときのこのスープ。男性には少なかったかな、と思うが絃斗はまったく気にしていない様子だった。

 向かい合ってテーブルにつく。
 いただきますをしたあと、絃斗はさっそくハンバーグを口に入れた。

「おいしい!」
「良かった」
 喜んでくれるのが素直にうれしかった。

 詩季も一口食べてみる。
 いつもと同じハンバーグなのに、なぜかいつもよりおいしく感じられた。

 食べ終わるのが惜しかった。
 食事が終われば彼は帰って行くだろう。彼が待つ人のところへと。

「僕、ずっとここにいたいな……」
 ぽつり、と絃斗が言う。
「え?」
 詩季は驚いて彼を見た。

「変な意味じゃないです、その、楽しかったから」
 顔を赤くして彼はうつむいた。

「ハンバーグおいしい」
 無理矢理話題を変えて、彼はハンバーグをまた口に入れた。
 詩季の胸に苦いものが広がる。

「お礼にコーヒー淹れますね」
 詩季の気を知りもせず、彼はそう言った。
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