セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 鍵盤ハーモニカの時間が終わり、授業の後半は、別のスペースに移動して、ラッパの演奏だ。

 私はまたしても、先生の見ていないすきに、ササッと、吹き口をウエットティッシュで拭きとった。

 このときも、杵築の視線を感じたけれど。今の私は、先生を挟んで杵築と対極の位置にある椅子に座っている。もちろん、意図的に、離れたのだ。

 離れた位置に座っている私からは、さすがの杵築も、ティッシュを強奪できない。


――わはは。指をくわえてみているがいい~。


 来週からは、もう会うこともないだろう。 
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