セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ～能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない～

　去年は覗くだけだった、時計台の中のフレンチレストランでお腹を膨らませた後。私は、青石兄にキャンパス内を案内してもらった。

　どこの学食が美味しいかとか、第二外国語の話とか、さすがに現在進行系で通っているだけあって、参考になる話ばかりだ。


　広いキャンパス内をグルッと回って、生協の入っている建物近くまでやってきたとき。

　青石兄から、生協のブックショップに本を取りに行くからちょっと待っててと言われ、私は外の日陰で待つことにした。
　

　横にある総合体育館の、二階に通じる大きな外階段の下が、ちょうど良い日陰になっている。

　階段のコンクリ壁を背に、時間を潰すためにスマホを取り出していると。
　男の人の声で、「百佳ちゃん」と呼ばれた。