セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ～能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない～

１７歳 〜使用人と話し合おう〜

　優奈ちゃんの婚約披露パーティの、少し前のこと。春名さんが１週間、お休みを取るということになった。

　どうやら、広島に住む、お父さんの体調が悪いらしい。

　春名さんは、「戻れるようだったら、早く戻りますんで。それまで遅刻しないよう、ちゃんと毎日、目覚ましをかけて下さいね。」と言っていたけれど。

　家に春名さんがいない状態というのは、かなり、違和感がある。私は、これまで、いかに自分が春名さんを頼っていたのかを実感させられた。


　思えば、私がまだ小さな赤子の頃から、春名さんはいつもこの家にいた。

　春名さんの若い時期を、私の世話だけで終わらせるのも申し訳ないので、「結婚しないの？」と聞いたこともある。

　でも春名さんは、すごく嫌そうに「プライベートへの干渉はお断りします。それとも何ですか、早く結婚でもして辞めろと、遠回しの肩たたきですか。」と言っていたので、それ以上は聞けなかった。

　春名さんが、いつまでも家にいてくれれば良いと、私自身も願っていたのかもしれない。