セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 そうだ、たしか和くんは、瞳ちゃんのことが好きだったはず。
 和くんを適当にあしらいながら、当時のことを懐かしく思い返していると。


「杵築さんだっ。」


 歓声が聞こえた。

 男子生徒は基本「くん」付けなのに、杵築と羽村のことだけは何故か、「杵築さん」「羽村さん」と呼ぶ人が多い。どっかの族の親分みたいだ。


「どけ。」


 順位表の前を陣取っていた私達は、杵築にギロッと睨まれて、さっと道を開けた。


――杵築は、1位か~。


 順位はすごいけど、なんだか腹立つな。上に立つ者は、もっと謙虚であるべきじゃないか?
 というか、コイツの態度こそ、悪役みたいなのに、何で人気があるんだろ。


 瞳ちゃん達と教室に戻ろうとすると、どこから現れたのか、羽村とすれ違った。
 もちろん、向こうは私を知らないはずだ。


 すれ違いやすいように、私達が廊下の端に少し寄ると、羽村は軽く頭を下げて、通り過ぎた。

 同じ攻略対象でありながら、スマートな振る舞いは、杵築も見習うべきだと思う。
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