恋神様に願いを込めて
泣きじゃくっていると、どくんと心臓に猛烈な痛みが走って、思わず倒れる。



「な…に…?」



心臓のあたりをぎゅうっと強く握るけど、痛みは増すばかり。


苦しい…。何これ…?



そこで私はハッと思い出す。


そういえば…朝の薬って飲んだっけ?


たしかブレザーのポケットに入れっぱなしにして、そのまま飲んでいない。



「う…っ」



強烈な痛みにもう今にも意識が飛びそうだ。



嫌だ、死にたくない…。



もっといろんな人の恋愛相談に乗りたかった。


恋をする人たちの眩しい笑顔が何よりも好きだったから。



佐野くんと一緒に桜も見たかった。


もしも病気なんかじゃなくて未来がちゃんとある私だったら、佐野くんに好きだと伝えられたのに。



佐野くんに会いたい。ずっと、そばにいたい…。



薄れゆく意識の中で、思い浮かぶのは佐野くんの笑顔ばかりだった。
< 91 / 95 >

この作品をシェア

pagetop