Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「っ……それは、……勘弁してくださいぃ……」
震える声を絞り出せば、背後でくすくす可笑しそうな声が笑った。
さささすがはクロードさん。
余裕ですね!?
ドクンドクンドクン……
こっちは心臓が口から飛び出しそうだというのに!
「本当に……茉莉花が無事でよかった」
いつの間にか笑い声は止み、ふいに、首筋に安堵の滲んだ吐息が触れた。
伝わってくる微熱に本音めいたものを感じて瞠目した私は、必死に浅い息を吐く。
ダメダメ。
距離が縮まったかもって、自惚れちゃいけない。
これは私のメンタルケアをしてくれてるだけ!
「き、今日は、助けてくれて、ありがとうございました」
全身で感じる彼の存在からとにかく意識を逸らそうと、口を動かしてみる。
「足、痛くないか?」
「えと、はい。動かさなければ。痛み止めも飲んでますし」
「しばらく外出は禁止だな。食事の用意も俺がやる。俺が遅くなる時は、デリバリーを頼んでくれ」
「食事の用意くらい、出来ますよ?」
「無理するな。早く治さないと、正月に間に合わないぞ?」
「お正月、ですか?」
「おばあ様に会いに行くんだろう?」
おばあちゃん、と聞いて、クロードさんに全集中していた意識が一瞬解ける。
あぁ、そうだ。
まだ彼を、スマホ画面越しでしかおばあちゃんに紹介できてなくて。
お正月には連れて行くからって、約束してたんだっけ。
随分前に交わした会話なのに、覚えててくれてたんだ。
なんだか嬉しい。
「じゃあ……頑張って治しますね」
「あぁ」
静かに言った彼は、大きな手を私の頭へ置いた。
そのままゆっくり撫で始める。
「もう眠れ」
繰り返される仕草は、この上なく優しい。