Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
食事はモダンな創作和食だった。
先付け、椀物、向付、焼き物……といった会席料理の基本を押さえつつも、見た目はまるでフレンチのよう。
白いお皿へ盛りつけられた料理は芸術と言ってもいいほどで、一皿一皿に感動が止まらない。
そのたびに私が乏しい語彙力をフル活動して料理を褒めれば、クロードさんも珍しく声をあげて笑って応えてくれて……
あの事件の後、こんなに幸せを感じる誕生日は初めてだった。
RRRR……
無粋な機械音が、和やかな空気に割り込んでくるまでは。
虫の知らせ、というんだろうか。
瞬間、なんだか嫌な予感がした。
「すまない、切り忘れていた」
舌打ちしたクロードさんがジャケットの内ポケットからスマホを取り出す。
ディスプレイにチラッと目を落とした彼が、わずかに眉を寄せたことに気づいた。仕事の電話なのかもしれない。
「どうぞ、出てください。急用だったらいけませんし」
束の間逡巡したクロードさんだったけど、「悪いな」ってもう一度謝ってから席を立つ。
スマホを耳へ持って行きつつドアへ向かうその後姿を、私は何気なく見送って――
『クロード!』
漏れ聞こえた声に、どくん、と鼓動が不穏な音を立てた。
それは、女性の声だった。