Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

ほら、よく考えて。
クロードさんと高橋さんが知り合いなのは特におかしくない。

だって彼の会社は、“リーズファンドアジア”。
今更だけどリーズグループ傘下であることは間違いないし、同じくリーズグループと関係がある企業の社長令嬢となら、面識があったって不思議じゃない。

きっと立場上、いろんな付き合いがあるのよ。
いちいち私に説明してたらキリがないから、言わないだけ。

もしかしたら今夜だって、会場内のどこかにクロードさんいるのかも。
私が気づかなかっただけで。

きっとそうよ。だから大丈夫。
自分の旦那様を信じなさい。

お父さんを思って泣く私を慰めてくれたあの優しさが、誕生日を一緒に祝ってくれたあの優しさが、ニセモノだったはずないでしょう?

自分に言い聞かせるように胸の内でつぶやいて、ぎゅっと唇を引き結んだ。


「大丈夫ですか? ご気分が優れないんですか?」

唐突に、物柔らかなテノールが頭上から降って来た。

マズい、ゲストに心配されてしまったらしい。
大急ぎで涙の滲んだ目元を拭い、ガバッと立ち上がる。

「すみませんっ全然大丈、ぶ……あっ」

「えっ、茉莉ちゃん!? どうしたんだい、こんなところで」

私を見下ろしていたのは長身の美丈夫――なんと学くんだった。
スーツ姿ってことは、プライベートじゃなくて仕事だろうか。

「えっと、学くんは、どうしたの?」

「僕はこのホテルでちょうど学会の発表があって……まぁとにかくあっちのソファに座ろう。顔が真っ青だよ」

眉をひそめる学くんに、引きつった笑みで首を振る。

「だ、大丈夫。私今、バイト中だし……」

もう戻るからって散々遠慮したのに、無駄だった。
彼は強引に私を引っ張ってソファへ座らせてしまった。

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