Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「旦那さんには、事件のこと話したの?」
「うん、両親への挨拶をどうするかって相談した時に、大体のことは」
かなりショッキングな内容だし、後で「聞いてない」って問題になるよりはと、ちゃんと伝えた。
15年前我が家に起きた悲劇――自宅でお父さんが殺された事件――のあらましも、その心労から数年後にお母さんが病死したことも。
犯人がまだ捕まっていないこともあり、もし少しでも彼に結婚を躊躇う気持ちが生まれるんだったら、それも仕方ないと思っていたけど……
「事件の解決を一緒に信じようって言ってくれたよ」
香ちゃんたちも同じことを心配してくれていたんだろう。私がそう言うと、揃ってホッとしたような表情を見せた。
「ほんっと、犯人が未だにどこかでのうのうと生きてるって思うと、マジでハラワタ煮えくりかえる」
「大丈夫、絶対今に天罰が下るんだから。逃げ切れるわけない」
実家が近所で、幼稚園の頃から家族ぐるみの付き合いがあったせいか、事件の話になると香ちゃんも知依ちゃんも、自分のことみたいに本気で怒ってくれる。
ほんとにありがたい存在だなぁと思う。
といっても、事件の後私はおばあちゃんの家へ引っ越したから、2人とはしばらく年賀状だけを細々とやり取りするだけだった。
交流が再開したのは、短大卒業後、就職を機に上京してからのこと。
東京の大学に進学していた彼女たちとまた会うことになって――嬉しい反面やっぱりちょっと怖かった。
精神的に不安定な時期が長く続いたし、過去を知る人と会うことでフラッシュバックが起きるんじゃないかとか。相手の、っていうよりは自分の反応が怖くて。
でも実際会ったら、私より先に2人が泣き出しちゃって。
あぁ心配してくれてたんだなって、素直に嬉しかった。
自分には、こんなに心配してくれる人がいるんだなって。
それからは、両親のことも事件のことも、構わず話してって自分からお願いしたんだ。
家族以外に覚えていてくれる人がいる。それは私にとって救いだったから。
「おじさんたちの分も、幸せにならなきゃだよ。茉莉花」
「うん……ありがとう。きっと幸せになるね」
私たちはもう一度、今度は私の両親のために乾杯した。