Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
聞き慣れた声に呼ばれて顔を上げると、すぐ横に停車した白色のセダンの窓が開いていて、運転席から春を先取りしたような爽やかなイケメンがこっちを見下ろしていた。
「学くん……」
「どうしたの、茉莉ちゃん。泣いてたの?」
慌てたように車を降りてきた学くんは、ズボンが汚れることも気にせずに地面に膝をついて私を覗き込んだ。
「だ、大丈夫。ちょっとその、スマホ落として、割れちゃってショックで……それより、どうして学くんがここに?」
不思議に思って聞けば、ニコッと王子スマイルが返ってきた。
「ちょうど茉莉ちゃんに会いに行こうと思ってたんだよ。急にオペが中止になって時間ができたからさ、茉莉ちゃんさえよかったら、食事でもどうかなと思って。あぁもちろん、ご主人が気にしなければだけど。ランチなら大丈夫だろ?」
え、もうそんな時間なの? とスマホで確認すれば、もう12時近い。
全然気づかなかった。
ランチ、か。
クロードさんが文句を言うことはないにしても、残念ながら今の私は何も喉を通らない。
楽しい食事相手にはなれない自信がある。
だから、また別の機会に、と断ろうとした。
けれどそこでフラッシュが瞬くように一瞬、思い出したんだ。
去年の暮れ、病院で再会した時の学くんの言葉を。
――失礼ですが、僕たち、どこかでお会いしたことありませんでしたっけ?
その直前には、クロードさんに対して「かがみ」とか口にしてたような気もする。
そういえば2人は同い年だし、学くんが各務蔵人を知っていてもおかしくないんじゃない?
新しい可能性に束の間息苦しさを忘れた私は、反射的に「うん、行けるよ」と頷いていた。
「ちょうどよかった。これから食事に行こうと思ってたところなの」