Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
そこで私は、脇に置いてあった手紙をパソコンのカメラに向かってかざした。
「ほら、さっき話したでしょ? おばあちゃんの家で、お母さんが集めた事件関連の資料を見つけたって。その中に入ってたの」
『桜木史恵? その人に会いに行くの?』
『手紙、なんて書いてあったのよ? 読んだんでしょ?』
「それが、『事件について話したいことがあるから、一度会えないか』ってだけ。書いてあるのは住所だけだから、これはもう行くしかないかなって」
『ただの冷やかしとか、嫌がらせとか、そういう可能性だってあるんじゃない?』
香ちゃんの言うことはもっともだ。私もそれを考えた。
実際柊馬によると、事件後はイタズラ電話とかめちゃくちゃ来てたらしいし。
ただ、どうしてお母さんがこの手紙だけ残しておいたのか、そこが気になるんだよね。しかも……
「この桜木さん、A大学の附属病院に勤めてる看護師だって自分のことを書いてるの。A大学って言えばお父さんの母校で、勤め先だった場所でもあるし、もしかしたら本当に、何かを知ってる可能性もあるかなって」
『あ、そういえばリーズメディカル、だっけ。事件の前に訪ねてきた人たちも、A大学の教授の紹介で来ました、って言ってたのよね? もしかしたら大学絡みで何かあるのかも……うん、調べてみた方がいいと思う』
知依ちゃんの賛成に力を得て、私は少しだけ表情を緩めた。
「無駄足になるかもって覚悟はしてる。ただ、クロードさんが犯人を見つけようとしてるなら、犯人が見つからない限り彼は自由になれないのよね。この後離婚しても――」
『え、離婚!?』
『離婚するのっ!?』
画面が揺れるくらいの勢いで食いつかれて、そういえばまだ話してなかったと思い出しながら「うん……しようと思う」と正直に答える。
「彼の方からは言いにくいだろうから、私から切り出すつもり」
距離を置こう、って言われた時はショックだったし、この5日間気持ちは揺れまくった。
といっても、離婚は避けられないなって、とっくに自分の中では決まってて。
あとの時間は、主にそれを自分に納得させるために費やした感じ。
これ以上、彼を古い十字架に縛り付けるべきじゃない。
あの事件に彼がどう関わってるにせよ、もう解放されていい。
解放してあげたい。
お父さんだって、同じことを言うと思う。